ポンペイ展レポ
先日ポンペイ展に行ってきた。いろいろと落ち着いたのでたまにはレポートを書こうと思う。ありがたいことにポンペイ展は基本的に撮影可能。ポンペイと言えば噴火で埋まってしまった古代遺跡。18世紀に発掘が進みアングルやダヴィッドも属す新古典主義を勃興させた一因ともされている。ヨーロッパ人のアイデンティティともいえるギリシア、ローマの古典古代、そのローマの遺跡がまさか東京で見れる日が来るとは思ってもいなかった。
ローマンコピー(※古代ギリシアに作られた作品のコピー)のこの作品。正確な身体表現やプロポーションはもちろん、手の血管が浮き出た感じや、背中や尻の筋肉感がすごかった。古典古代の理想がこの像に詰まっているようだった。古代ローマは古代ギリシアの模倣に帰したところが多いので冒頭からローマンコピーが見れる時点でかなり古代ローマを体感している感じがする。
《三美神》
ボッティチェリ、クラナハ、ルーベンスも描いた時代を超えてヨーロッパの画家たちの画題になってきた彼女たち。古代ローマでも変わらず描かれてきたと思うと神話の影響力は絶大なものだ。西洋美術に大きな影響を与えた古典古代の源流がその他の作品も始め、まさかトーハクで観れる日が来るとは。
《マケドニアの王子と哲学者》
これ、修復大変だったのだろうな…2022年にこうして蘇っていることにも感動を覚えざるをえないし、この写実具合、芸術家はいつの時代も変わらず技術を持ち続けていたのだろう。
《エウマキア像》
天才ミケランジェロをも彷彿してしまうこの服のひだの美しさ。ミケランジェロも古典古代の作品をよく見ていたらしいけど納得だ。服の下に脚の存在感も表現しているのが素晴らしすぎる。
《サッフォー》
高校の世界史の資料集で親の顔レベルに見たサッフォーさんにも会えるとは。女性に対する愛を歌った詩を残していたり、女性しか入れない学校を作ったことからもレズビアンとされているけど真偽はいかに。
《ヘルマ柱型肖像》
顔と男根だけ…インパクトがすごかった。男性の象徴、子孫繫栄、そういう意味が込められているのかな。
《金庫》
ちょっとした装飾に心を奪われた。模様とかも面白い。ピカピカの状態が気になる。
《メメントモリ》
この時代にすでにメメントモリってあったのか。いつからあるんだろうか。享楽的の暮らしをしていたと思ってたけどそんなこともないのか。これもまたヨーロッパ、さらにはヨーロッパを超えて知られてきた画題。西洋美術のルーツがここにもあった。
《ネコとカモ》
《果物のある静物》
ネコとカモ、こんな写実的なモザイクが約2000年前に存在したのか。そして気になったのがこういった日常的なモチーフの壁画は棚も描かれていること。インテリア的役割を担っていたのだろうか。
《哲学者たち》
枠の古代ギリシアの演劇の仮面が気になる。仮面って欺瞞とかそういうことを表すけど当時はどうだったのだろうか。
当時の人々が使っていた道具。こういうものを見ると本当に彼らが生きていたこと、日常を感じる。噴火でほんの一瞬で消えてしまったんだもんな。今、ちょうどロシアがウクライナに侵攻しているけど、日常なんていつ壊れるかわからないな。
《スフィンクスのテーブル脚》
エジプト由来のスフィンクス。ギリシア、ローマでは上半身が女性として表されるけれど本当だ。ポンペイ展は西洋美術のルーツをたどる旅でもあるのかもしれない。
実際に作品があった環境も再現されていた。こういうのもっと増えてほしい。”そこ”にあるからこそ作品は真の意味を成すと思う。
《ヒョウを抱くバッカス》