藝術の書架

日々の文化探訪

美術モデルをしてきた。

 先日、美術モデルをしてきた。かなり貴重な経験だったと思うので今回はそのレポートをしてみる。感想など綴っていますので気になる方や、やってみたいと思う方はぜひ参考程度にぜひどうぞ。

 

目次

経緯

レポート、感想

まとめ

 

経緯

私は長年、美術館に絵を見に行くということを習慣的に行っているのだが、よくよく考えたら描かれるということはしたことが無いと気づいた。絵を描いたことは学校の授業や趣味で何回もある。しかし描かれたことはなかった。単なる似顔絵程度だったらあるかもしれないが美術モデル、デッサンモデルとはわけが違うだろう。というわけで描かれるという気持ちが知りたくて美術モデルの単発アルバイトをしてきた。

 

レポート、感想

※以下のレポートは一度、1つの場所で美術モデル体験をした私の感想なので、あくまで参考程度に読んでいただけると幸いです。

 まずは基本情報。私がアルバイトをしたのは美大受験対策の予備校。校内は撮影禁止。まず着くと、本日のポーズの指示が出された紙が渡され、その通りにポーズをする。椅子に座って長い木の棒を肩にかけて持つポーズだった。私の場合は服装指定があったが衣装は貸し出しも可能。実際そういうところが多いのではないだろうか(私調べ)。手順としては20分ポーズをとって10分休憩をひたすら繰り返すというものだった。朝から夜まで1時間ほどの休憩も挟みつつ合計約6時間ポーズを取り続けた。

 以下レポート。モデルである私は生徒さんに囲まれるため、まず高さ50~60cm程の台の上でポーズを取る。そして20分間に設定したタイマーをスタートさせ、生徒さんたちの「お願いします!」の声とともにデッサンが始まる。最初、初めて描かれる10分間ほどは感じたことのない、不思議な気持ちでいっぱいだった。みんなが私を隅々まで観察し、見つめている。「なるほど、動物園の檻の中の動物たちはこんな気持ちなのかもしれない。」、そんなことも考えた。そして私の体のプロポーションデスケル※や手を使って測られていく。ここまで観察されると心の中まで見透かされそうで怖かったが、あくまでこれはデッサンであり、肖像画ではない。生徒さんたちの関心はわたしの外見にあるのだ。もちろん私と生徒さんたちは会話もしない。そういった対象の内面的個性が出ない点でこのようなデッサンは面白いと思った。そして20分間終了のタイマーが鳴り響く。生徒さんたちの「ありがとうございます!」の声で、私も「ありがとうございました。」と一声挨拶し、台からおりて10分間の休憩に入る。

デスケルとは以下のようなもの。

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 始めるときの「お願いします!」と終わるときの「ありがとうございます!」。正直これはあるとは思ってなかったので驚きだった。考えてみれば生徒さんからしたら描かせてもらっているので当たり前かもしれないが、私には描き手のモデルを決して粗末にしない気持ちが表れているようでよかった。私は別にモデルとして敬ってほしいのではない。しかしそのような挨拶に作業中は無言であれども互いの信頼関係が垣間見られたようでうれしかったし、快くモデルができた。挨拶って大事だ。 

 美術モデルの仕事は貴重な経験でありなかなか機会がないと言えど、さすがに1日合計6時間も何もせずボーっとしているのは大変だし、しばらくはしたくないと思った。実際のところ私は何回かウトウトしてしまった。モデルの仕事は描き手との対峙だけではない。眠気との対峙でもあり、戦いでもあった。きっとウトウトは顔に出るものなので生徒さんたちにもバレていたことだろう。恥ずかしい。美術モデルは描き手と話せるなら別だが、話せないならば何をポーズ中考えるかを決めておいたほうが良いと思った。

 そして夜になり私の仕事は終了。生徒さんたちは講評の時間に入る。描かれた自分を見たいということもあり、聞いてみたら見ていってもよいということで少しだけ見せてもらった。残念ながら写真を撮ってくることは叶わなかったが、写真では感じられない自分ってこういう風に見えているのか、というのがわかっておもしろかった。自分は自分で思うよりも目が近いようだ。そして少し唇は厚い。

 

まとめ

 以上、私の美術モデルの体験レポートであるが、もう一度したいか、と聞かれたら即答でYESとは言えない。休憩も挟んで合計6時間と言えども、ずっと同じポーズは身体が凝る(パイプ椅子だったからというのもあるかも)。でも生徒さんたち、将来の偉大なる芸術家さんの役に少しでも立てたことに関してはすごく達成感があったし、やりがいを感じた。また少し時間が経ったらもう一度挑戦したい。今日な経験になった。